研修医の備忘録

小児科を目指す医師のブログ。1日1abstractを目標に更新中。

虫垂炎術後の経口抗生剤は体腔内感染を防ぐ!

Influence of Oral Antibiotics Following Discharge on Organ Space Infections in Children With Complicated Appendicitis.

Anandalwar SP,et al. Ann Surg. 2019.


【テーマ】

子供において複雑性虫垂炎を起こした人で退院後に経口抗生剤投与を受けた人と、受けなかった人を比較して退院後の体腔内感染OSIの率が変わるのか。


【背景】

複雑性虫垂炎の子供で退院後に抗生剤治療を実施することの臨床的有用性を決めるデータの存在が限られていた。


【方法】

2013年1月から2015年6月に17の病院が参加して行われたNSQIP-Pediatric Appendectomy Pilot Collaborativeで複雑性虫垂炎に対して虫垂摘出術を実施された3-18歳の子供を対象とした後ろ向きコホート研究。人口統計学的特徴と疾患の重症度で調整した、退院後経口抗生剤を投与された群とされなかった群の間でのOSI発生率を多変量混合効果回帰を用いて比較した。副次分析対象は特に重症の患者(複雑性の病気であるとの所見が手術中複数あることか入院期間が6日以上の人)とした。


【結果】

経口抗生剤の利用率と退院後のOSIはそれぞれ57.0% (病院による値の幅: 3-100%)と5.2% (幅: 0-16.7%)であった。全てのコホートをpropensity-matched analysisで解析したところ、経口抗生剤投与を退院後に受けた人は受けてない人と比較して、OSIの発生が38%減少した(4.2% vs. 6.6%,OR 0.62 [0.29,1.31],P = 0.21)。特に重症度が高い患者を対象としたコホート(324人、46%)では、経口抗生剤の使用は61%のOSI減少をもたらした(4.3% vs 10.5%;OR 0.39 [0.15,0.96],P = 0.04)。


【結論】

複雑性虫垂炎に罹患した子供において、退院後経口抗生剤を使用することは、体腔内感染OSIを減らすかもしれず、特に重症度が高い患者においてより利益がありそうである。