研修医の備忘録

小児科を目指す医師のブログ。1日1abstractを目標に更新中。

親の転勤は子供に悪影響を与える

Health impacts of parental migration on left-behind children and adolescents: a systematic review and meta-analysis.

Fellmeth G,et al. Lancet. 2018.


【テーマ】

世界的に家族が転勤になったときに取り残される子供や青年の数は増えている。私たちは、低所得国と中間所得国(LMICs)において、親の転勤が子供や青年の健康に及ぼす影響について調べた。


【方法】

今回のシステマティックレビューとメタアナリシスのため、親の転勤が残されたLMICsの子供(0-19歳)に与える「栄養、精神的健康、意図しない傷害、感染症、薬物使用、避妊手段をとっていない性交渉、妊娠初期、および虐待」における影響について調べた観察研究をMEDLINE,Embase,CINAHL,the Cochrane Library,Web of Science,PsychINFO,Global Index Medicus,Scopus,Poplineより言語の制限がない限りで2017年4月27日から探した。研究対象の内、0-19歳が占める割合が50%を下回っているものや、対象の平均年齢が19歳以上のもの、転勤期間が6ヶ月以上である割合が50%を下回っているもの、転勤期間の平均または中央値が6ヶ月を下回っているものは除外した。私たちは自主的に、発表されている論文から、システマティックレビューソフトウェアや要約の抜き出しからの推定を用いて、研究を選び出した。主要評価項目は、栄養(発育阻害、痩せ、低体重、過体重および肥満、低出生体重、および貧血)、精神的健康(うつ病性障害、不安障害、行動障害、自傷、自殺)、意図的でない怪我、薬物使用、虐待、および感染症を含む健康へのリスクと有病率とした。変量効果モデルを用いて、合わせたリスク比RR、標準化平均差SMDを計算した。こと研究はPROSPEROに登録された。


【結果】

私たちの調査で10284の記録を特定し、111の研究が分析に含まれ、264967人の子供達(取り残された子供106167人と転勤しなかった親を持つ子供158800人)が含まれた。91の研究が中国で行われ、国内労働転勤の影響に注目していた。転勤のなかった子供と比較して、転勤があった子供ではうつ病のリスクが高く、うつ病スコア(RR1.52 [95% CI 1.27-1.82];SMD 0·16 [0.10-0.21])、不安感(RR 1.85 [1.36-2.53];SMD 0.18 [0.11-0.26])、自殺念慮(RR 1·.70 [1.28-2.26])、行為障害(SMD 0.16 [0.04-0.28])、薬物使用(RR 1.24 [1.00-1.52]),痩せ(RR 1.13 [1.02-1.24])、発育不良(RR 1.12 [1.00-1.26])が高かった。その他の栄養面や意図的でない怪我、虐待、下痢では、取り残された子供と転勤のない子供の間で差はなかった。その他の感染症自傷行為、避妊手段を取らない性交渉、早期妊娠に関しては研究がなかった。研究の質は様々で、43%はバイアスリスクが高いか明らかではなく、5つ以上の国にまたがっていた。


【解釈】

親の転勤は取り残された子供にとって有害であり、有益性に関しては証拠がなかった。政策担当者と医療専門家は、若い人たちの健康を改善するため行動を起こさねばならない。