研修医の備忘録

小児科を目指す医師のブログ。1日1abstractを目標に更新中。

胃腸炎の子供にラクトバチルス投与しても良くならない

Multicenter Trial of a Combination Probiotic for Children with Gastroenteritis.

Randomized controlled trial

Freedman SB,et al. N Engl J Med. 2018.


【背景】

毎年アメリカでは、約170万人もの子供が胃腸炎で救急部を受診する。これらの子供達に善玉菌を投与することが予後を改善するのかどうかというデータは欠けている。


【方法】

腸炎に罹患してカナダの6カ所の救急部を訪れた、3ヶ月から48ヶ月の子供886人に対しランダム化二重盲検試験を実施した。ラクトバチルス・ラムノサスR0011とL.ヘルベティカスR0052を混合した善玉菌を4.0×10^9個のコロニー分、1日2回5日間に渡って投与する群とプラセボ群に分けた。主要評価項目は登録から14日間以内で修正Vesikariスケールで9点より高い点数(スコアは0〜20点での評価で数字が大きいほど重症)であった、中等度から重度の消化管炎症の病気エピソードがあることとした。副次評価項目は下痢と嘔吐の長さ、予定外の医師受診、副作用発現の有無とした。


【結果】

登録から14日目での中等度から重度の消化管炎症を引き起こしていたのは、プロバイオティクス群で414人中108人(26.1%)、プラセボ群で413人中102人(24.7%)だった(オッズ比1.06;95%信頼区間0.77〜1.46;P=0.72)。治験実施施設や年齢、便からのロタウイルスの検出、登録前の下痢と嘔吐の頻度での調整後は、割り付けられたグループによる中等度から重度の消化管炎症予想することはできなかった(オッズ比1.06;95%信頼区間0.76〜1.49;P=0.74)。下痢の期間(それぞれ52.5時間[四分位範囲18.3〜95.8]と55.5時間[四分位範囲20.2〜102.3];P=0.31)や、嘔吐の期間(17.7時間[四分位範囲0〜58.6]と18.7時間[四分位範囲0〜51.6],P=0.18)、予定外の医療提供者訪問(30.2%と26.6%;オッズ比1.19;95%信頼区間0.87〜1.62;P=0.27)、副作用が発生した患者の割合(34.8%と38.7%;オッズ比0.83;95%信頼区間0.62〜1.11;P=0.21)はプロバイオティクス群とプラセボ群の間で明らかな差はなかった。


【結果】

腸炎で救急部を受診した子供において、1日2回のL.ラムノサスとL.ヘルベティカスの投与は登録から14日後の中等度から重度の胃腸炎への進展を防ぐことができなかった。