研修医の備忘録

小児科を目指す医師のブログ。1日1abstractを目標に更新中。

急性白血病の集中化学療法中にレボフロキサシンを投与すると菌血症を防げる

Effect of Levofloxacin Prophylaxis on Bacteremia in Children With Acute Leukemia or Undergoing Hematopoietic Stem Cell Transplantation: A Randomized Clinical Trial.

Randomized controlled trial

Alexander S,et al. JAMA. 2018.


【重要なこと】

菌血症は、急性白血病の子供と造血幹細胞移植(HSCT)を受けている子供でかなりの罹患率がある。小児における抗生物質予防の効果に関するデータは限られている。


【目的】

急性白血病に対する集中化学療法や造血幹細胞移植中の子供における、レボフロキサシンの予防投与の有効性とリスクを評価すること。


【デザイン】

多施設、非盲検化、ランダム化試験で、アメリカまたはカナダの76施設において、急性骨髄性白血病または再発急性リンパ芽球性白血病からなる急性白血病、およびHSCTレシピエントで、集中化学療法を受けた患者(6ヶ月〜21歳)を(2011年7月から2016年4月まで)登録し、2群に分けて2017年9月までフォローアップした。


【介入】

急性白血病の患者をランダムに、2回の連続サイクルの化学療法に対してレボフロキサシン予防を受ける群(n = 100)と、予防をしない群(n = 100)に割り付けた。HSCTを実施している人たちに関しては、1回のHSCT手続きに対して、レボフロキサシン予防を受ける群(n = 210)と、予防をしない群(n = 214)に割り付けた。


【主要評価項目】

主要評価項目は2回の化学療法中(急性白血病)または1回の移植治療(HSCT)の間の、菌血症の発症とした。副次評価項目は発熱と好中球減少、重症感染症、侵襲性真菌症、クロストリジウムディフィシルによる下痢、筋骨格毒性作用とした。


【結果】

624人の患者のうち、200人が急性白血病(四分位範囲における平均年齢11歳[6-15歳]、46%が女性)で、424人がHSCT実施中(四分位範囲における平均年齢7歳[3-14歳]、38%が女性)であり、これらの人が登録された。急性白血病の195人の患者の間では、菌血症様の症状はプラセボ群と比較してレボフロキサシン予防群で明らかに低かった(21.9% vs 43.4%;リスク差21.6%;95%信頼区間,8.8%-34.4%,P = .001)。一方、HSCT実施中の418人では、レボフロキサシン予防群で菌血症のリスクが明らかに低いとは言えなかった(11.0% vs 17.3%;リスク差6.3%;95%信頼区間,0.3%-13.0%;P = .06)。発熱と好中球減少はレボフロキサシン群で少なかった(71.2% vs 82.1%;リスク差10.8%;95%信頼区間,4.2%-17.5%;P = .002)。重症感染症に関しては明らかな差はなかった(3.6% vs 5.9%;リスク差,2.3%;95%信頼区間,-1.1%〜5.6%;P = .20)。侵襲性真菌症(2.9% vs 2.0%;リスク差,-1.0%;95%信頼区間,-3.4%〜1.5%,P = .41)、クロストリジウムディフィシルによる下痢(2.3% vs 5.2%;リスク差,2.9%;95%信頼区間,-0.1%〜5.9%;P = .07)、2ヶ月時点での筋骨格毒性作用(11.4% vs 16.3%;リスク差,4.8%;95%信頼区間,-1.6%〜11.2%;P = .15)12ヶ月時点での筋骨格毒性作用(10.1% vs 14.4%;リスク差,4.3%;95%信頼区間,-3.4%〜12.0%;P = .28)に関してもレボフロキサシン群とコントロール群で差はなかった。


【結論】

急性白血病で集中化学療法を受けている子供の間では、レボフロキサシン予防投与は予防投与をしない群と比較して明らかに菌血症を減らした。しかしながら、HSCTを受けている子供に関してはレボフロキサシン予防投与による明らかな菌血症を減らす効果は認められなかった。