研修医の備忘録

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潜在性甲状腺機能低下症に甲状腺ホルモン投与の必要性なし!

Association of Thyroid Hormone Therapy With Quality of Life and Thyroid-Related Symptoms in Patients With Subclinical Hypothyroidism: A Systematic Review and Meta-analysis.

Review article

Feller M,et al. JAMA. 2018.


【テーマ】

潜在性甲状腺機能低下症に対する甲状腺ホルモン療法の有効性ははっきりしない。最近の大規模ランダム化比較試験による新たな情報でもって、以前実施されたメタアナリシスをアップデートする必要がある。


【目的】

甲状腺ホルモン療法と、潜在性甲状腺機能低下症を持つ大人のQOL及び甲状腺由来の症状の関係性をメタアナリシスを実施して調べること。


【データソース】

PubMed,EMBASE,ClinicalTrials.gov,Web of Science,Cochrane Library,CENTRAL,Emcare,Academic Search Premierでそれぞれの発刊開始から2018年6月4日までに掲載されたもの。


【選択研究】

妊娠しておらず潜在性甲状腺機能低下症がある人において、甲状腺ホルモン投与と、プラセボまたは治療なしの場合を比較するランダム化比較試験を対象とした。2人のレビューアがそれぞれ独立して、取得したすべての研究のタイトルと要約に基づいて、適格性を評価した。この最初のステップで除外されなかった研究は、2人のレビューアによる独立した全文評価の後、研究対象に含まれるか評価された。


【データの抽出と統合】

2人の独立したレビュアーがデータを抽出し、バイアスリスクの評価(コクランバイアスリスクツール)と、エビデンスの質の評価(GRADEツール)を実施した。統合のため、医療スコアの差異は、標準化偏差値へ変更された(例えばQOL→標準化偏差値;正の値は、甲状腺ホルモン療法の利点を示す、0.2、0.5、および0.8は、それぞれ小、中、大の効果に対応する)。メタ分析の変量効果モデルが適用された。


【主要評価項目】

最短3ヶ月後のフォローアップの際の、QOL甲状腺によってもたらされる症状。

 

【結果】

全体で、最初に特定された3088の論文の内、基準を満たした21個、2192人の成人がランダム化された。治療後(3-18ヶ月)、甲状腺ホルモン療法は、プラセボと比較して甲状腺刺激ホルモンの値を正常基準範囲まで下げることにつながったものの(0.5-3.7 mIU/L vs 4.6-14.7 mIU/L)、一般的QOLの改善にはつながらず(n = 796;標準化偏差値-0.11;95%信頼区間-0.25〜0.03;I2=66.7%)、甲状腺に起因する症状の改善にもつながらなかった(n = 858;標準化偏差値0.01;95%信頼区間-0.12〜0.14;I2=0.0%)。全体を通して、バイアスリスクは低く、GRADEツールで判断したエビデンスの質は中から高品質であった。


【結論】

妊娠していない成人で潜在性甲状腺機能低下症の人の間では、甲状腺ホルモン療法が一般的なQOLの改善や、甲状腺起因性症状の改善につながらなかった。これらの発見は成人における潜在性甲状腺機能低下症に対する、甲状腺ホルモン療法のルーチン使用を支持しなかった。