研修医の備忘録

小児科を目指す医師のブログ。1日1abstractを目標に更新中。

ネフローゼ症候群に対するプレドニゾロン投与期間を延長しても効果変わらず

Long term tapering versus standard prednisolone treatment for first episode of childhood nephrotic syndrome: phase III randomised controlled trial and economic evaluation.

Randomized controlled trial

Webb NJA,et al. BMJ. 2019.


【目的】

特発性ステロイド感受性ネフローゼ症候群の子供に対して、最初のプレドニゾロンによる治療を8週間から16週間へ延長することが、病気の再発を予防するかどうか判断すること。


【デザイン】

費用対効果分析を含む、二重盲検、並行群間、第3相ランダム化プラセボコントロール比較試験。


【設定】

125のイギリス国民健康サービス地区総合病院と3次小児腎臓センター。


【参加者】

1歳から14歳のステロイド感受性ネフローゼ症候群の初発患児。


【介入】

子供達はランダムに16週間にわたる延長プレドニゾロン療法(合計投与量3150 mg/m2)か、一般的な8週間のプレドニゾロン療法(合計投与量2240 mg/m2)に分けられた。薬は5mg錠として投与され、一緒にそっくりなプラセボを、研究中のどの時点でもどちらのグループでも同じ錠数になるようにした。最小化アルゴリズムにより、民族(南アジア、白人、その他)および年齢(5歳以下、6歳以上)においてバランスの取れた治療への配分が保証された。

 

【主要評価項目】

主要評価項目は最短のフォローアップ期間である24ヶ月間での最初の再発とした。副次評価項目は再発率、頻繁なネフローゼ症候群ステロイド依存性ネフローゼ症候群の再発、代わりの免疫抑制療法の使用、副作用の発生率、アッヘンバッハ小児行動チェックリストによる行動変化、治療後の質調整生存年、およびヘルスケアの観点からの費用対効果とした。


【結果】

最初の再発に関しては、両群に明らかな差は認められなかった(ハザード比0.87,95%信頼区間0.65〜1.17,P=0.28)。また、高頻度のネフローゼ症候群再発件数(治療延長群60/114 (53%)vs 通常群55/109 (50%),P=0.75)、ステロイド依存性ネフローゼ症候群の件数(48/114 (42%)vs 48/109 (44%),P=0.77)、代わりの免疫抑制療法を必要とした件数(62/114 (54%)vs 61/109 (56%),P=0.81)にも明らかな差は認められなかった。研究を完遂した人の中でのプレドニゾロンの合計投与量は、延長群では6674 mg、通常群では5475 mgだった(P=0.07)。重大な副作用に関しても統計学的に明らかな発生率の差は認められなかった(延長群19/114 (17%)vs 通常群27/109 (25%),P=0.13)。通常副作用に関しても、行動面以外では同様であった(行動面では通常群の方が発生率が少なかった)。ただし、アッヘンバッハ小児行動チェックリストによるスコアでは差はなかった。延長治療は一般的な生活の質の平均を上げ(0.0162質調整生存年の増加,95%信頼区間-0.005〜0.037)、コスト削減に繋がった(差-£1673 ($2160;€1930),95%信頼区間-£3455〜£109)。


【結論】

イギリスのステロイド感受性ネフローゼ症候群の子供に対して、最初のプレドニゾロン投与期間を8週から16週へ延長することでは、臨床的な結果は改善しなかった。しかしながら、使用資源の削減やQOLの上昇といった、短期的健康経済利益はあると証明された。