研修医の備忘録

小児科を目指す医師のブログ。1日1abstractを目標に更新中。

低好酸球性の喘息には吸入ステロイド・LAMAがあまり効かない

Mometasone or Tiotropium in Mild Asthma with a Low Sputum Eosinophil Level.

Randomized controlled trial

Lazarus SC,et al. N Engl J Med. 2019.


【背景】

マイルドでしつこい喘息持ちの患者の多くは喀痰内の好酸球が2%以下(低好酸球レベル)である。これらの患者に対する適切な治療に関しては知られていない。


【方法】

42週、二重盲検、クロスオーバー試験に、少なくとも12歳でマイルドかつしつこい喘息295人の患者を割り付け、モメタゾン(吸入ステロイド薬)またはチオトロピン(長時間作用型ムスカリン受容体拮抗薬)またはプラセボを投与した。患者は喀痰内の好酸球レベルによって(<2%か≥2%か)分けられた。主要評価項目は、治験薬の1つに対して事前に指定された反応の違いを示し喀痰内の好酸球割合が低い患者において、モメタゾンがプラセボと比較して反応をみせるかと、チオトロピンがプラセボと比較して反応を見せるか、とした。反応性の判断は、全ての治療合同でも治療が失敗したもの、喘息発作がなかった日数、1秒努力呼気による階層的複合結果をもととし、両側P値が0.025未満で統計的に有意であると示された。副次評価項目は患者の喀痰中の好酸球レベルの高低で比較することとした。


【結果】

全体の73%の患者が低好酸球レベルであり、この患者のうち59%が治験薬に対して反応の違いをしめした。しかしながら、プラセボと比較してモメタゾンやチオトロピンではっきりとした違いは認められなかった。低好酸球レベルで特異的な治療反応を見せた患者の中で、57%(95%信頼区間,48〜66)はモメタゾンで良い反応が認められ、43%(95%信頼区間,34〜52)はプラセボで良い反応が認められた(P = 0.14)。一方で60%(95%信頼区間,51〜68)はチオトロピンで良い反応が認められ、40%(95%信頼区間,32〜49)はプラセボで良い反応が認められた(P = 0.029)。高好酸球の患者の間では、モメタゾンはプラセボと比較して明らかに反応性が良いが(74% vs. 26%)、チオトロピンに関してはそうでもなかった(57% vs. 43%)。

 

【結論】

マイルドでしつこい喘息を持つ患者のほとんどは、喀痰内の好酸球レベルが低く、モメタゾン及びチオトロピンへの反応性がプラセボと比較して明らかに良いとは言えなかった。このデータは、低好酸球レベルの患者に対して、吸入グルココルチコイドを他の治療と比較する臨床試験で、両者が均衡状態にあることを示している。