研修医の備忘録

小児科を目指す医師のブログ。1日1abstractを目標に更新中。

通常酸素投与とネーザルハイフローを比較した時、両者の死亡率には差がない

Effect of High-Flow Nasal Oxygen vs Standard Oxygen on 28-Day Mortality in Immunocompromised Patients With Acute Respiratory Failure: The HIGH Randomized Clinical Trial.

Randomized controlled trial

Azoulay E,et al. JAMA. 2018.


【テーマ】

急性低酸素呼吸器不全(AHRF)に対しネーザルハイフローが使用されることが増えている。


【目的】

AHRFを合併した免疫不全の患者において、一般的な酸素療法と比較してネーザルハイフローの使用が死亡率を下げるかどうか判断すること。


【デザイン】

フランスで2016年5月16日から201712月31日までに32のICUを対象に実施したランダム化比較試験で、AHRF(室内気でPao2 <60 mm HgまたはSpo2 <90%の状態、もしくは>30/分の頻脈、努力呼吸、呼吸困難があって≥6 L/分の酸素投与を必要とする状態)を合併した免疫不全の患者776人の患者が登録された。


【介入】

ネーザルハイフロー治療を受ける群(388人)と一般的な酸素療法を受ける群(388人)に1:1でランダムに割り付けられた。


【Main Outcome】

主要評価項目は28病日時点での死亡率とした。副次評価項目は28病日時点での挿管と人工呼吸器管理の必要性と、挿管後3日でのPao2:Fio2比、呼吸数、ICUと病院滞在日数、ICU感染症、患者の快適さと呼吸困難感とした。


【結果】

778人のランダムに割り付けられた患者(平均年齢64歳[IQR,54-71]、女性259人[33.3%])のうち、研究完遂したのは776人(99.7%)だった。ランダム試験の結果、介入群とコントロール群でそれぞれ、平均呼吸数は33/分(IQR,28-39)と32/分(IQR,27-38)そしてPao2:Fio2は136 (IQR,96-187)と128 (IQR,92-164)であった。どちらの群でも平均SOFAスコアは6(IQR,4-8)だった。28病日時点での死亡率は明らかな差はなかった(35.6% vs 36.1%;差-0.5% [95%信頼区間-7.3%〜+6.3%];ハザード比0.98 [95%信頼区間0.77〜1.24];P = .94)。挿管率も明らかな差はなかった(38.7% vs 43.8%;差-5.1% [95%信頼区間-12.3%〜+2.0%])。コントロール群と比較してネーザルハイフロー群に割り付けられた人では、Pao2:Fio2が高い傾向にあり(150 vs 119;差19.5 [95%信頼区間4.4〜34.6])、6時間経過後の呼吸数が少なかった(25/分vs 26/分;差-1.8/min [95%信頼区間-3.2〜-0.2])。ICU滞在日数には明らかな差はなく(8 vs 6日;差0.6 [95%信頼区間-1.0〜+2.2])、ICU感染症(10.0% vs 10.6%;差-0.6% [95%信頼区間-4.6〜+4.1])、入院日数(24 vs 27日;差-2 days [95%信頼区間-7.3〜+3.3])、患者の快適さと呼吸困難感にも差を認めなかった。

 

【まとめ】

重症の急性低酸素呼吸器不全を合併した免疫不全の患者において、ネーザルハイフローは28病日での死亡率を、一般的な酸素療法を行った群と比較して明らかには改善させなかった。