研修医の備忘録

小児科を目指す医師のブログ。1日1abstractを目標に更新中。

退院後電子タバコを使用すると禁煙成功率が下がる

Association of E-Cigarette Use With Smoking Cessation Among Smokers Who Plan to Quit After a Hospitalization: A Prospective Study.

Randomized controlled trial

Rigotti NA,et al. Ann Intern Med. 2018.


【背景】

多くの喫煙者は、喫煙をやめるために電子タバコを使用するといわれるが、電子タバコが禁煙努力を助けるかどうかは不明である。


【目的】

退院後の電子タバコの使用が、タバコを止めようとしていて、エビデンスに基づく治療を使用するよう助言を受けている喫煙者において、その後のタバコ摂取に関連するかどうかを判断すること。


【デザイン】

ランダム化比較試験の二次データ分析。(ClinicalTrials.gov:NCT01714323 [親試験])。


【場所】

3ヶ所の病院。


【参加者】

禁煙を計画し、病院で禁煙カウンセリングを受けた1357人の成人成人喫煙者を、退院時にタバコ治療推奨群(対照群)か、タバコ治療をしない群(介入群)に無作為に割り当てた。


【測定】

自己申告制で電子タバコの使用(暴露)を退院後1か月および3か月に評価した。生化学的に検証された禁煙できているか(結果)は、退院後6ヶ月で評価された。


【結果】

参加者の28%は、退院後3か月以内に電子タバコを使用した。237個の傾向スコアマッチペアの分析では、電子タバコのユーザーは6か月時点でタバコの使用を控える可能性が非ユーザーよりも少なかった(10.1%vs 26.6%、リスク差-16.5%[95%信頼区間-23.3%〜9.6%])。電子タバコの使用と禁煙の関係は、従来の治療への容易なアクセスを与えられた介入患者間で差がでて(7.7%vs29.8%;リスク差-22.1%[信頼区間-32.3%〜-11.9%])、また治療の推奨のみを受けた対照患者でも差がでた(12.0%vs24.1%;リスク差-12.0%[信頼区間-21.2%〜2.9%])(相互作用のP = 0.143)。


【制限】

患者は電子タバコの使用を自己選択した。観測研究では、測定不能の交絡が存在する可能性がある。


【まとめ】

退院後3か月間、禁煙を試みた喫煙者の4分の1以上が、主に禁煙を支援するために電子タバコを使用したが、定期的に電子タバコ使用する人はほとんどいなかった。この使用パターンは、電子タバコを使用しなかった喫煙者と比較して、6か月での禁煙の減少に関連していた。電子タバコの定期的な使用が禁煙を支援するか妨げるかを判断するには、追加の研究が必要だ。

PDA閉鎖のためには高容量イブプロフェン経口投与が有効

Association of Placebo, Indomethacin, Ibuprofen, and Acetaminophen With Closure of Hemodynamically Significant Patent Ductus Arteriosus in Preterm Infants: A Systematic Review and Meta-analysis.

Review article

Mitra S,et al. JAMA. 2018.


【要点】

早産児における動脈管開存症(PDA)の保守的管理に重点が置かれていますが、血行動態的に大きな影響を及ぼしているPDAを発症している患者の治療には、さまざまな薬物療法的介入が使用される。


【目的】

一般的な薬物療法介入によって、血行動態的に大きな影響を及ぼすPDAが閉鎖する、相対的な可能性を推定し、副作用発生率を比較する。


【データソースとその選出】

MEDLINE、Embase、およびCochrane Central Control of Controlled Trialのデータベースをもとに、2017年12月31日に更新された、サービス開始から2015年8月15日まで検のものに加えて、2017年12月までの会議議事録調査した。ランダム化比較試験に含まれたのは、在胎37週未満で、臨床的または心エコー検査で血行動態的に大きな影響があるPDAがあると診断された子供で、経静脈または経口でインドメタシンイブプロフェン、またはアセトアミノフェンを投与された群をそれぞれ比較し、また、プラセボ群、または治療なしの群とも比較した。


【データの抽出と合成】

データは、6人のレビュアー内で組まれた独立した2人組によって抽出され、ベイジアン変量効果ネットワークメタ分析で合成された。


【主要評価項目】

血行動態的に大きな影響を及ぼすPDAの閉鎖。副次評価項目は、外科的閉鎖、死亡、壊死性腸炎、および脳室内出血とした。


【結果】

4802人の幼児を対象とした68のランダム化臨床試験で、14種類のインドメタシンイブプロフェン、またはアセトアミノフェンの治療バリエーションが存在した。全体のPDA閉鎖率は67.4%(幼児4256人中2867人)だった。高用量の経口イブプロフェンは、標準用量の静脈内イブプロフェンに比べてPDA閉鎖のオッズが有意に高く(オッズ比[OR]3.59;95%信頼区間1.64-8.17;絶対リスク差199/1000人[95%信頼区間95-258])、また標準用量の静脈内インドメタシンよりも高かった(OR2.35 [95%信頼区間1.08-5.31];絶対リスク差124/1000人[95%信頼区間14-188])。ランキング統計に基づいて、高用量の経口イブプロフェンは、PDA閉鎖のための最高の薬物療法としてランク付けされ(累積ランキング[SUCRA]曲線下の平均表面0.89 [SD0.12])、そして外科的PDA結紮を防止する最高の薬物療法としてもランク付けされた(平均SUCRA 0.98 [SD0.08])。プラセボ使用または治療なし群における、死亡率、壊死性腸炎、脳室内出血のオッズは、何かしらの治療を実施した群と比較して有意差はなかった。


【結論】

高用量の経口イブプロフェンは、標準用量の静脈内イブプロフェンまたは静脈内インドメタシンと比較して、血行動態的に大きな影響を及ぼしているPDAを高確率で閉鎖した。プラセボまたは無治療は、死亡率、壊死性腸炎、または脳室内出血の可能性を有意に変化させることはなかった。

ネーザルハイフローは酸素投与が必要な細気管支炎患児の治療に有用

A Randomized Trial of High-Flow Oxygen Therapy in Infants with Bronchiolitis.

Randomized controlled trial

Franklin D,et al. N Engl J Med. 2018.


【背景】

カニューレを介した高流量酸素療法は、その有効性を示す質の高い証拠が限られているにもかかわらず、細気管支炎の乳児において、ますます使用されるようになっている。集中治療室(ICU)以外での鼻カニューレを介した高流量酸素療法の有効性は明らかになっていない。


【方法】

この多施設無作為化対照試験では、気管支炎を患い、酸素補給療法として、高酸素療法(高流量群)または標準酸素療法(標準療法)を受ける必要がある12か月未満の乳児を割り当てた。標準治療グループの乳児は、その状態が治療失敗の基準を満たしていれば、救助用高流量酸素療法を受けることができる。主要評価項目は、治療の失敗による治療のエスカレーションとした(4つの臨床基準のうち3つ以上を満たした時と定義:持続性頻脈、頻呼吸、低酸素血症、および病院の早期警告ツールによってもたらされた医学的評価)。副次評価項目には、入院期間、酸素療法の期間、三次病院への移送率、ICU入院、挿管、有害事象が含まれていた。


【結果】

分析には1472人の患者が含まれた。治療のエスカレーションを受けた乳児の割合は、標準療法群の23%(733人中167人)と比較して、高流動群では12%(739人中87人)だった(リスク差-11%;95 %信頼区間-15%〜-7%;P <0.001)。入院期間または酸素療法の期間に有意差は認められなかった。各々のグループで、気胸が1例(乳児全体の1%未満)発生した。標準治療群の治療の失敗があった167人の乳児のうち、102人(61%)が高流量救助療法に反応した。


【結論】

ICU外で治療された細気管支炎の乳児の中で、高流量酸素療法を受けた乳児は、標準的な酸素療法を受けたグループの乳児よりも治療の失敗による治療のエスカレーション率が有意に低かった。

小さい頃肥満でも7歳以降早い段階で減量できれば糖尿病のリスクを上げない

Change in Overweight from Childhood to Early Adulthood and Risk of Type 2 Diabetes.

Bjerregaard LG,et al. N Engl J Med. 2018.

 


【背景】

小児期の過体重は、成人期の2型糖尿病のリスク増加と関連している。成人期前の過体重の寛解がこのリスクを軽減するかどうかを調査した。


【方法】

私たちは、7歳と13歳、および成人期初期(17〜26歳)に体重と身長を測定した62,565人のデンマーク人男性に対し調査を実施した。過体重は、疾病管理予防センターの基準に従って定義した。2型糖尿病の状態に関するデータ(30歳以上、6710人)は、国民健康登録所から入手した。


【結果】

7歳時点での肥満(62,565人中3373人;5.4%)、13歳時点での肥満62,565人中3418人;5.5%)、または成人期初期での肥満(62,565人中5108人;8.2%)は、2型糖尿病のリスクと正の関連があった。関連は、年齢を重ねてからの肥満と若年での2型糖尿病の診断でより強かった。13歳より前に太りすぎが寛解した人は、肥満になったことがない人と比較して、30〜60歳で2型糖尿病と診断されるリスクに差がなかった(ハザード比、0.96、95%信頼区間0.75〜1.21)。今まで一度も肥満にならなかった人と比較して、7歳と13歳で太りすぎていたが、成人期初期では肥満ではなくなった人では、2型糖尿病のリスクが高かった(ハザード比1.47、95%信頼区間1.10〜1.98)。しかし、それらのリスクは、持続的に肥満だった人のリスクよりは低かった(ハザード比[持続的に肥満vs一度も肥満ではない]4.14;95%信頼区間3.57〜4.79)。7歳から成人期初期にかけての体格指数の増加は、7歳当時体重が正常であった男性でさえ、2型糖尿病のリスク増加と関連していた。


【結論】

7歳での小児肥満は、思春期またはそれ以降の年齢まで継続した場合にのみ、成人2型糖尿病のリスク増加と関連している。

小児の夜間救急受診

特に小児科では、いわゆる”風邪”で夜間救急を受診する人が非常に多い。3歳の息子が夕方くらいから熱を出して、夜も寝られないので連れてきました、という症例はありふれている。こういった患者さんが来たときに、医師が基本的に診ているのは

 


①感染の場所はどこか

咳をしていれば喉だろうし、下痢・嘔吐をしていれば消化器とあたりをつける。

②水分はとれているか

体調が悪くなってご飯を食べなくなるのは当たり前である。しかし、水分も飲めなくなると言われると話が変わってくる。

 


以上2点である。子供に関して言えば、上気道炎の原因のほとんどはウイルス感染であり、所謂抗生剤は仮に飲んだとしても効果はない。従って、救急外来で処方される薬はせいぜいが解熱鎮痛剤と痰切りくらいであり、正直受診したからといって大した薬はでないのだ。むしろ夜間苦しむ子供を引きずって、病院まで連れてくる方が体調悪化につながる可能性が高い。病院にかかれば早く治ると考えて救急外来を受診するくらいであれば、取り敢えず家で様子をみることをおすすめしたい。

保湿入浴剤を使用してもアトピーは良くならない

Emollient bath additives for the treatment of childhood eczema (BATHE): multicentre pragmatic parallel group randomised controlled trial of clinical and cost effectiveness.

Randomized controlled trial

Santer M,et al. BMJ. 2018.


【目的】

小児の湿疹の管理に保湿入浴剤を含めることの臨床的有効性と費用対効果を決定すること。


【デザイン】

2つの並列グループによる実際的なランダム化オープンラベル優越性試験。


【設定】

ウェールズおよびイングランド西部および南部の96の一般的診療科。


【参加者】

アトピー性皮膚炎の英国の診断基準を満たす1〜11歳の子供483人。非常に軽度の湿疹のある子供と週に1回未満しか入浴しない子供は除外された。


【介入】

介入グループの参加者は、いつもの臨床チームから保湿入浴剤を処方され、12か月間定期的に使用した。対照グループは、12か月間入浴剤を使用しないように指示された。両方のグループは、保湿剤を常につけることを含む標準的な湿疹管理を継続し、介護者は被験者を洗う方法について標準化されたアドバイスを与えられた。


【Main Outcome】

主要評価項目は、16週間にわたる毎週、患者向けの湿疹測定方法(POEM、スコア0-7軽度、8-16中程度、17-28重度)で測定した湿疹コントロール状態とした。副次的評価項目は、1年間を通じた湿疹の重症度(ベースラインから52週目までの月ごとのPOEMスコア)、一次医療相談に至る湿疹の悪化回数、疾患による生活の質(皮膚炎の家族への影響)、一般的な生活の質(CHU9D/child health utility-9D)、資源の利用、および処方される局所コルチコステロイドまたは局所カルシニューリン阻害剤の種類と量、とした。


【結果】

483人の子供が無作為化され、1人の子供が同意を撤回した。残った482人の子供が試験に参加した。51%が少女(244/482)、84%が白人(447/470)で、平均年齢は5歳だった。96%(461/482)の参加者が少なくとも1回のベースライン後POEMを完了したため、分析に加えられ、77%(370/482)が主要評価項目の測定地点の80%以上をクリアした(16週まで週一で行われるアンケートの12 / 16)。ベースライン時点での平均POEMスコアは、入浴剤グループでは9.5(SD 5.7)、入浴剤なしグループでは10.1(SD 5.8)だった。16週間時点での平均POEMスコアは、入浴剤グループでは7.5(SD 6.0)、入浴剤なしグループでは8.4(SD 6.0)だった。16週間にわたって毎週行ってきたPOEMスコアに、グループ間で統計的に有意な差は見つからなかった。ベースラインの重症度と交絡因子(民族性、局所コルチコステロイド使用、石鹸代替使用)を調整し、研究の参加者と参加者内の応答性でグループ分けすることを考慮すると、入浴剤なしグループのPOEMスコアは、入浴剤使用群よりも0.41ポイント高かった(95%信頼区間-0.27〜1.10)。公表されているPOEMの最小の臨床的に意義がある最小の差である3ポイントを下回った。グループは、副次評価項目、経済的結果、または副作用において違いはなかった。

 

【まとめ】

この試験では、小児の湿疹の標準管理に保湿入浴剤を含めることによる臨床的利益の証拠は見つからなかった。保湿剤を常につけること、および石鹸代替品の最適療法に関する、さらなる研究が必要だ。

外来はなぜ並ぶのか

病院の外来を受診すると待ち時間がかなり長いことが多々ある。自分が患者のときは、なぜこんなにも待ち時間が長くなるのか疑問であったが、自分が医療者側になると、その理由が分かってきた。

外来中に医師がやっている仕事は、患者さんの状態を確認する診察はもちろんであるが、その他にも以下のようなものがある。

①カルテ・処方箋の作成

問診をとりつつカルテを記載している訳だが、当然内容は殴り書きになりがちである。最近は患者さんの目を見て診察しない医師が問題となり、意図的にカルテ記載を後回しにすることもある。診察と並行してカルテが書けない以上、診察終了後、患者さんを診察室から出してから記載を進める必要がある。処方箋に関しても同じだ。

②紹介状・診断書作成

紹介状作っておきますね、などと軽く言うが、つまり紹介状とはこれまでの病歴をまとめた書類である。以前入試でよくやった文章要約を、数年場合によっては数十年の情報単位で実施することとなり、当然時間がかかる。大病院では数日後まで完成を待ってくれと言えるが、開業医では診察した当日に渡すこともあり、隙間時間でなんとか要約を作成することになるわけだ。

③患者さんの情報把握

診察・治療する以上、患者さんの今の状態を把握する必要がある。初診の患者さんは良いが、10数年同じ病院に通っている患者さんであったりすると、これまでどんな治療をしてきたのか、持病にはなにがあるのかなど、カルテを見返さないと流石に思い出せない。個々の患者さんに対して、この思い出し手順が求められ、必然的に次の患者さんを呼び込むまでに時間が必要なのだ。

 

できる限り早く診察したいのは医師も同じだが、なかなかそう簡単にはいかないのが現実である。