研修医の備忘録

小児科を目指す医師のブログ。1日1abstractを目標に更新中。

重症肺炎の原因はウイルスより細菌の方が多そう…

Causes of severe pneumonia requiring hospital admission in children without HIV infection from Africa and Asia: the PERCH multi-country case-control study.

Pneumonia Etiology Research for Child Health (PERCH)Study Group,Lancet. 2019.

 

【テーマ】

5歳以下の子供において、肺炎が死因に占める割合は大きい。臨床と微生物学で使用される新たな分析方法で、アフリカ及びアジアの国々の子供達の肺炎原因について調べた。


【デザイン】

いずれも24ヶ月以上かけて実施された、7つの国々(バングラデシュガンビアケニア、マリ、南アフリカ、タイ、ザンビア)で行われた9つの症例対照研究を用いた。


【研究対象】

1〜59ヶ月のひどい肺炎を患った患者を対象とした。コントロール群は年齢調整した研究サイトからランダムに収集した子供とした。鼻咽頭および口腔咽頭、尿、血液、誘発痰、肺吸引液、胸水、および胃吸引液を培養、マルチプレックスPCR、またはその両方で検査した。最初の分析対象となったのはHIV感染者でなく、胸部X線に異常所見がないケースであり、コントロール群もHIV感染者でないこととした。


【Main Outcome】

研究対象として4232人の患者を登録し、コントロール群として5119人を登録した。研究対象の患者のうち1769人がHIV感染なく、胸部のレントゲンでも異常がなかった。コントロール群では5102人がHIV感染者ではなかった。研究対象の1752人中31.7%にwheezeがあり、30日以内の死亡率は6.4%だった。血液培養が陽性だったのは56例(3.2%)で、56例の内33.9%を占めた肺炎連鎖球菌が最も割合が大きかった。ほとんど全ての研究対象群、コントロール群で鼻咽頭および口腔咽頭培養からは少なくとも1種類の菌がPCR法で検出された(98.9%と98.0%)。研究対象群の鼻咽頭および口腔咽頭培養からは、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、インフルエンザウイルス、肺炎連鎖球菌、Hib、b型以外のインフルエンザ菌、ニューモシスチス・イベロチイが検出された。病因を分析すると、61.4%がウイルス性で、27.3%が細菌性、5.9%が結核菌だった。重症例と比較して、超重症例ではウイルス性54.5%、細菌性33.7%と細菌性の割合が増えた。ライノウイルス、ヒトニューモウイルスAまたはB、肺炎連鎖球菌、結核菌、インフルエンザ菌は、それぞれ5%かそれ以上の病原体割合を占めていた。また年齢によって、ボルデテラ・ペルツシス、パラインフルエンザ1型または3型、パラコウイルス、エンテロウイルス、ニューモシスチス・イベロチイ、RSウイルス、ライノウイルス、黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌が病因に占める割合が変わり、肺炎の重症度はRSウイルス、黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌、パラインフルエンザ3型で異なる様子が認められた。各所から採られた病原体上位10種が病因菌の割合の79%かそれ以上の割合を占めていた。


【結果】

入院が必要な肺炎のほとんどが、限られた数種類の病原体から引き起こされていることを示した。ある一集団の病原体に対する予防や治療が、実質的に子供の肺炎の結果に影響を与えることが分かった。

 

【まとめ】

子供の肺炎を起こすウイルス・菌は決まっている。